事故事例の目的としては、事故の再発防止・未然防止を目的として、現場で発生した事故や、ヒヤリ・ハット等の情報を収集・活用し、対策を講じることができます。
ハインリッヒの法則では、１件の重大な事故・災害の背後には２９の軽微な事故があり、その背景には「ヒヤリ」としたり「ハット」したりするような３００の出来事が存在するといわれています。
大事故は、偶発的に起こるものではありません。日常の「ヒヤリとする体験」や「ハッとする出来事」は、いずれ大きな事故につながる前兆であることを理解し、このような体験や出来事があった場合はそのままにせず、何らかの対策を講じておく必要があります。
また、日頃からヒヤリ・ハット事例を記録し、事例を出し合い共有することもリスクマネジメントの観点からは大切なことです。
作業者が、現場の安全を確保するためには、どのような事故が発生しているかを知ることが大切で継続的に情報収集することが重要です。
事故の状況
受電電圧・電力 ： ６６００ Ｖ・１５０ ｋＷ
事故発生の電気工作物 ： 引込用ケーブル
事故の原因 ： 作業者（第三者）の過失
事故の発生
事故が発生した需要家の前の公道では、水道工事が予定されており、着工告知書が当需要家にも配布され水道工事業者の責任者によって、エ事場所周辺の住民に挨拶が行われました。
しかし、当地を所轄する電力会社の営業所や、事故が発生した需要家の電気主任技術者には連絡はしていませんでした。
そして事故の当日、以前より着工告知のあった２３時から水道工事が始められました。
工事開始後すぐに電力会社の変電所のＤＧＲ (地絡方向継電器）が動作した。１分後に再送電が自動的に行われたが、不成功となって波及事故となってしまいました。
事故応動
電力会社の係員により、管理技術者協会の保安センターに電話が入れられて、担当の電気主任技術者の自宅電話番号についての照会がありました。
管理技術者協会保安センターの担当者により、当事業所の電気主任技術者宅へ電話が入れられ、波及事故発生から配電線復旧までの経緯と、電力会社の係員が設置者側と主任技術者に連絡が取れず、困っている旨が伝えられた。
事故復旧
設置者側と、現場に向かった主任技術者と電力会社の係員は、表口に警備保障の警報があったので、裏口を壊して店内へ入りました。変電室のＰＣＴ部分で、配線を切離して絶縁抵抗を測定したところ，引込用ケーブルの地絡が確認されました。
電力会社及び設置者、管理技術者で復旧の対策協議が行われました。まずは電力会社の測定車により、地絡点の場所を判断し、地中部分だった場合は、水道局の立合いのもとで再掘削を行う事で事故の状況を判断することになります。
パルス波により、ケーブル地絡点の測定を行ったところ、ケーブル全長約７０ｍのうち多回路開閉器から全長の５％の地中部分に地絡点があることが判明しました。
事故の原因
電力会社係員の立会いのもとで、引込用ケーブルの掘削作業が開始された。責任分界点より自家用側で、高圧キャビネットより約５ｍの所で、トラフの上蓋が破損して、ツルハシのような先端がケーブル外装に接触した痕跡があった。
水道局の担当者が、破損点を確認したので、破損部を中心に５０㎝ほど切り取り、そこから両側の絶縁抵抗を測定したところ異常がないので、地絡点は破損部と断定された。
事故再発の防止対策
今回の事故が発生した需要家では、多回路開閉器から２～３ｍは電力会社のケーブルとなっており、そこから自家用側のケーブルと接続されて、接続点を責任分界点としていました。
通常、多回路開閉器が歩道上にある場合は、需要家は敷地内にキャビネットを設けて、そこに責任分界点を置くのが普通だが、当需要家にはキャビネットを置くスペースがなかったため、電力会社の多回路開閉器から、需要家の変電室内のＰＣＴまでのケーブルを、新しい６０㎟ＣＶＴケーブルに引替えて責任分界点をＰＣＴ一次側接続部に変更することにした。
電力会社の多回路開閉器から、需要家への歩道下のケーブルを保護しているコンクリートのトラフを、すべて金属製の防護管に取替える事で再発防止対策とした。
まとめ
作業者が現場で発生した事故情報、ヒヤリ・ハット情報を適切に収集し、組織的に事故防止のための対策を推進した場合、事故件数の減少や利用者からの信頼・評判の向上の効果が期待できます。
使用する設備・工具については、正しい使用方法と内在する危険性について理解させ、事故が起きないよう常に注意して使用するよう情報を共有しましょう。
働く人の安全を守るために有用な情報を掲載し、職場の安全活動を応援します。
働く人、家族、企業が元気になる現場を創りましょう。
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