電気設備は、通常使用される電圧に対して十分な絶縁耐力があるかどうか(絶縁破壊をしないかどうか)を確認するため法令(電気設備の技術基準の解釈 第15・16条参照)により試験を行う必要があります。
一般的には、「試験による対象物の損傷・劣化を防ぐために設計上の耐電圧よりは充分に低く、かつ通常の運転状態中にその回路に加わることが想定される異常電圧に相当する程度の電圧を規定の時間印加しても絶縁破壊を起こさない」ことで十分な絶縁耐力(性能)があると判断することが出来ます。
直流絶縁耐電圧試験の場合は、試験開始時に対地静電容量への充電電流が発生するものの、静電容量分への飽和(満充電)以降は劣化に起因する抵抗成分漏れ電流のみが流れ続け、それを漏洩電流として捉える為、試験器として必要な電流(=電源)が少なく済む ことから、大規模な現場であっても、コンパクトな試験器材での対応が可能となります。
尚、直流による一定電圧による試験である為、交流で行う場合の正負(±)波高値に相当する2倍の電圧で試験を行うこととなります。
高圧電路・機器が新設又は増設された場合には,規定の試験電圧に耐えうるかどうかを確 認するものです。(ただし、製作工場で JEC・JISに定められた耐圧試験に合格していることが確認されているもので、設置場所でもその性能が維持されると判断できる場合は、現地では常規対地電圧(通常の運転状態で系統に加わる対地電圧)を電路と大地間に加えることで所要の絶縁性能を満たしているものと認定することができます。
それでは試験及び測定の判断基準の内容について、見ていきましょう。
直流絶縁耐力結果の判定
試験電圧印加後、一次電流及び二次電流並びに印加前後の絶縁抵抗に異常がなく、異音・振動・変色・変形等が認められなかった場合には良と判定します。
直流絶縁耐力試験の異常現象が発生した場合の対応
(1) 耐圧試験前の絶縁抵抗測定値が6 M Ω以下の場合は、がいし、ブッシング等の清掃を十分に行います。特に梅雨の時期とか雨が降った後は、湿気のために表面抵抗が大幅に 低下していることがあります。もし、清掃しでも絶縁抵抗が回復しない場合はどの機器 が不良なのかを調査し交換する必要があります。
(2) 絶縁抵抗計の指示のふらつきについて、絶縁抵抗計は、プローブ(※1)を電気設備に接触させた瞬間、いったん大きく振れ、その後一定値に安定するものです。これが安定しないときは、 機器の不良か接続不良となります。接続不良は場所を確認して直せばよいが、機器が不良の場合は修理するか、もしくは機器の交換が必要になります。
(※1)プローブとは「測定や実験などのために、被測定物に接触または挿入する針」と定義されています。
(3) 昇圧の途中で電流が急激に増加した場合について、まず絶縁破壊と見ます。そして直ち に電圧を降圧させて電源、スイッチを開放し、不良箇所を調査しなければなりません。印加 電圧が1000Vを超えてから不良状態になった場合は1000V絶縁抵抗計では発見できないこともあります。この場合には、個々の機器の耐電圧試験を行うか、500Vあるいは100Vの高電圧絶縁抵抗計で不良箇所を探すという方法になります。
もし原因がケーブルの不良とわかった場合には、ケーブル本体より端末処理の不良の場合が多いです。たとえば、プレハブ式のものでも汚れが多かったり水がかかると不良になるし、テープ巻式のものでは材料・処理方法等不良につながる要素が多いので確率が高いです。
したがって、まず端末部分を調査してみることをお勧めします。
(4) 昇圧の途中での電流がふらつく場合について、昇圧途中の電圧と電流の関係は,変圧器鉄心のヒステリシス特性のために正確な直線にはならないが、ほぼ比例的に増加していくといってよいです。この関係がずれていると感じたら、いったん昇圧を停止し、電圧・電流の安定状態を見ます。もし、電流が電源電圧と無関係に変動するようであれば機器等の不 良が考えられるので、機器の不良調査が必要となります。
(5) 規定電圧まで上昇した後電流が不安定になるか急激に増大した場合について、いずれかの機器が絶縁破壊を起こしたものと考えて、不良機器の調査が必要となります。
(6) 昇圧中又は規定値に上昇後異常音・放電現象が出た場合について、高電圧が印加されるとほとんどの機器に多少の発音や放電が生じる可能性があります。特に高温・多湿の日にはそれが若干大きくなることがあります。問題はその音質と音量が、かすかに聞こえる程度ならよいが、それが大きい場合にはたとえ耐圧試験が完了しでも不安が残るのでメーカとも相談して対策を講じる必要があります。
(7) 耐電圧試験前と耐電圧試験後の絶縁抵抗値が相違する場合について、耐電圧後の絶縁抵抗値が著しく低下した場合は、その原因を究明し長期的使用に耐えるか否かの判断をする必要があります。
直流絶縁耐力試験
交流で使用する電路・機器については交流で耐電圧試験を行うのが原則であるが、長尺ケーブルのように静電容量の大きい場合には大容量の試験用電源が必要となり、現場での試験実施が困難になります。解釈では、ケーブルを使用する交流電路及びケーブルを使用する機械器具の交流の接続線、もしくは母線に対しては直流電圧による耐圧試験が認められていて、試験電圧は交流試験電圧の2倍(回転交流機を除く交流の回転機は 1.6倍)、試験時聞は交流と同じく連続10分間加えるとなっています。
直流絶縁耐力の判定
連続10分間規定電圧に耐えれば良とします。正常なケーブルの場合には、試験電圧の上昇時に相当の電流が流れるが CVTケーブルは1分後頃から安定状態になります。また、ケーブルに問題がある場合には昇圧中又は規定電圧印加後電流が増加し、少しひどくなると電圧調整器の操作に関係なく高圧 倒の電圧計の指示が低下してきて、最悪時には短絡状態になってしまいます。このような状態になったら、いずれかの部分に絶縁破壊が生じているので原因を調査して修理、交換などが必要になります。
まとめ
危険有害要因を発見して、これらを事前に除去することで正常な状態を維持し、安全かつ円滑な作業行動が行えるようにします。したがって、試験実施者はこの目的を十分に理解・把握して点検し、その状況や結果を記録します。
異常を認めた場合は、必要に応じて直ちに改善しあるいは必要な報告・連絡・指示等を行いましょう。
電気設備は快適で豊かな生活を営むうえでなくてはならないものとして、私たちの生活に溶け込んでいますが、電気は、生活を豊かにする一方、取り扱いを間違えると、私たちの安全・安心な暮らしを脅かすような事故を招くことがあります。
どんなに優れた技術であっても、安全性が担保されない場合、その普及はおぼつかないものとなってしまいます。このため、我が国の高度成長期における電気の急速な普及を、この電気事業法が陰で支えていたともいえます。
また、安全・安心の確立に向けた取組みは、常に時代にあった要求に対応していくことが大切です。
皆様の電気設備不良個所の対応について、本ブログが、皆様の理解の一助となれば幸いです。
働く人の安全を守るために有用な情報を掲載し、職場の安全活動を応援します。
働く人、家族、企業が元気になる現場を創りましょう。
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