事故事例の目的としては、事故の再発防止・未然防止を目的として、現場で発生した事故や、ヒヤリ・ハット等の情報を収集・活用し、対策を講じることができます。
ハインリッヒの法則では、１件の重大な事故・災害の背後には２９の軽微な事故があり、その背景には「ヒヤリ」としたり「ハット」したりするような３００の出来事が存在するといわれています。
大事故は、偶発的に起こるものではありません。日常の「ヒヤリとする体験」や「ハッとする出来事」は、いずれ大きな事故につながる前兆であることを理解し、このような体験や出来事があった場合はそのままにせず、何らかの対策を講じておく必要があります。
また、日頃からヒヤリ・ハット事例を記録し、事例を出し合い共有することもリスクマネジメントの観点からは大切なことです。
作業者が、現場の安全を確保するためには、どのような事故が発生しているかを知ることが大切で継続的に情報収集することが重要です。
事故状況
当事業場では，省エネルギー活動を実施していたが，空調用冷凍機の消費電力が大きいのに着目し，その運転方法の変更による電力節減を 検討中であった. K (被害者)と同じ課の職員Sは，冷凍機の低負荷時の消費電力について， 正確なデータを採るよう上司より指示されてい た. sは事故の前日，同僚0によるエアコンプ レッサ用モータ(低圧)の消費電力測定に立会 っていた.
事故の当日， Sは冷凍機の消費電力の測定を経験のある 0に依頼しようとして探したが，別 の仕事に従事していたらしく見当たらなかっ たこのため，近くにいたK (被害者，電気係に配転されて 4カ月)に測定を依頼し， 2名で現場に赴いた.
Kは冷凍機の高圧盤が施錠されていたので，鍵を同僚の Hより借りてきて高圧盤を開いた. K は電気係配転後， 0 よ り 当 該 冷 凍 機 の 点 検 作 業時に高圧盤を開いて冷凍機起動回路の説明を受けていた.
しかし， K は，測定器(クランプ電力力率計) の使用方法については全くわからず，電圧測定 用クリップの接続箇所について，迷いながらも盤内の気中電磁接触器の U相端子にはさんだ. その時，測定器を見つめていた Sは“ジィー”という音を聞いた一瞬“おや?”と思ったが， 次 の 瞬 間 Kがもう一方の電圧クリップを V相 端子に接触させたので，高圧短絡となりアーク が飛んだ.Kはその際のアークで両前腕熱傷 ( 3 週 間 入 院 加 療 ) を 受 け た
事故の原因
被害者 Kは，電気係へ配転されて 4カ月であり，電気係員として実務遂行に際しては，係長 や他の経験ある係員の指導を必要としていた. 事故のあった測定器については現品を前にし て使い方について一通りの説明を係長から受け ていたが，実際の回路についての測定経験はな かったなお，当該高圧盤での測定作業についても上司より作業手順，作業準備について十分 な説明および打合せはなされていなかった.
以上のような状況において， Sは測定に経験のある 0がいないというので，近くにいた Kに 安易に測定を依頼したことが事故につながった. Kは，安全靴は着用していたが，ヘルメットお よび高圧用コ`ム手袋は着用せず，両腕の作業衣 の袖をひじ下までまくり上げていた測定器の 接続箇所を間違えたのが直接の原因であるが， これは知識の欠如，事前の準備不良によるものである。
事故再発の防止対策
再発防止対策としては，次のようなことが挙 げられる.
(1) 電気主任技術 者 は，電気関係者に対し て電気設備の取扱い，測定作業等について保 安• 安全教育を周知徹底させる.
(2) 電気測定作業について作業基準を定 め，現場での測定器の使用方法を作業者が納得 ゆくまで説明しておく必要がある.
(3) 作業者は，電気機器の取扱いについ て，わからない点，疑問があった時は，作業をすぐやめ，責任者に相談することあいまいな まま作業をすることほど危険なものはない.
(4) 作業者はあらかじめ作業手順，作業方 法等の打合せを必ず行い，防護具の着用を厳守 すること.
まとめ
作業者が現場で発生した事故情報、ヒヤリ・ハット情報を適切に収集し、組織的に事故防止のための対策を推進した場合、事故件数の減少や利用者からの信頼・評判の向上の効果が期待できます。
使用する設備・工具については、正しい使用方法と内在する危険性について理解させ、事故が起きないよう常に注意して使用するよう情報を共有しましょう。
働く人の安全を守るために有用な情報を掲載し、職場の安全活動を応援します。
働く人、家族、企業が元気になる現場を創りましょう。
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