事故事例の目的としては、事故の再発防止・未然防止を目的として、現場で発生した事故、ヒヤリ・ハット等の情報を収集・活用し、対策を講じることができます。
ハインリッヒの法則では、１件の重大な事故・災害の背後には２９の軽微な事故があり、その背景には「ヒヤリ」としたり「ハット」したりするような３００の出来事が存在するといわれています。
大事故は、偶発的に起こるものではありません。日常の「ヒヤリとする体験」や「ハッとする出来事」は、いずれ大きな事故につながる前兆であることを理解し、このような体験や出来事があった場合はそのままにせず、何らかの対策を講じておく必要があります。
また、日頃からヒヤリ・ハット事例を記録し、事例を出し合い共有することもリスクマネジメントの観点からは大切なことです。
作業者が、現場の安全を確保するためには、どのような事故が発生しているかを知ることが大切で継続的に情報収集することが重要です。
事故の状況
平常どおり営業していたところ，午前 10時少 し前，当事業場の受電室で，何かが破裂したよ うな異常音が響き，同時に停電となった.
受電室の隣りにある冷凍室で仕事をしていた 連絡責任者(保安協会との連絡に当たる代務者) は，疸ちに受電室へ点検に行った.
受電室に入り，高圧受電盤の隣りの金網から， 内部をのぞこうとした時，頭上で破裂音が聞こ え，アークが発生した.
アークは金網越しに，連絡責任者の顔にまで 達し，右横の顔面に火傷を負った10時 08分，連絡責任者は事務所に戻って，応 急手当のあと，保安協会の地区事務所へ，アー ク発生による人身事故を報告した.
保安協会では，波及事故を引き起こしている可 能 性 が あ る と 考 え た が ， 負 傷 者 に 確 か め さ せ るわけにもいかず，電力会社への連絡は行わな いで，現地に直行することとした.
10時 23分，保安協会職員が当事業所に到着 し，調査した結果，計器用変圧器が絶縁破壊し ており，この計器用変圧器の一次側に取付けられた高圧限流ヒューズ (7.2kV, 1A,50 MVA, 2本)が，破損していることがわかった
10 時 25 分 ， 電 力 会 社 へ 波 及 事 故 と 人 身 事 故 の発生を連絡し，当自家用引込用の柱上分岐開 閉器の開放を依頼した.
1時 05分，事故点探査中の電力会社職員が， 営業所からの無線連絡を受けて，当事業所に到 着し，引込用分岐開閉器を開放して，配電線を 送電し，停電は解消した.
事故の原因
昭和 46年に製造され， 15年間使用してきた高圧計器用変圧器が，経年劣化によって絶縁破 壊 し ， 波 及 事 故 を 引 き 起 こ し た (9 時 56 分).
1分後に，電力会社の変電所において，再閉 路継電器が動作し，再送電された時，高圧計器 用変圧器の 一次側に取付けられた限流ヒューズ が，事故電流を遮断する際，破裂し，発生した アークによって相間短絡に至ったものと判断さ れた.
たまたまこの時，連絡責任者が点検のために 近づいたことが， 二次災害の人身事故につながったものであ った.
事故再発の防止対策
電力会社の配電線には，通常 3~5個の事故捜査機が電柱上に取付け られており，停電事故 が発生 した場合には，停電 区間の減少と事故点 発見までの時間を短縮することに役立っている.
事故捜査器と自動開閉器を組合せて，事故区 間の検出を行うものであり，動作電源として 自動開閉器の電源側にある柱上変 圧 器から 交 流 10 0 V を 供 給 し て い る .
事故が発生し，配電線が停電すると，す べて の自動開閉器が開放される.
送電されると電源側にある変圧器が充電され， 事故捜査器に 10Vが供給されることによっ てタイマが動作し， 14秒の整数倍にセットされ た整定時間が経過して，自動開閉器を投入する.
投入後， 14秒以内に電源電圧がなくなると， 自動開閉器は再び開放され，事故捜査機はロッ クされる.いったんロックされたら，電源電圧 が復帰しても投入されることはない.
まとめ
作業者が現場で発生した事故情報、ヒヤリ・ハット情報を適切に収集し、組織的に事故防止のための対策を推進した場合、事故件数の減少や利用者からの信頼・評判の向上の効果が期待できます。
使用する設備・工具については、正しい使用方法と内在する危険性について理解させ、事故が起きないよう常に注意して使用するよう情報を共有しましょう。
働く人の安全を守るために有用な情報を掲載し、職場の安全活動を応援します。
働く人、家族、企業が元気になる現場を創りましょう。
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