事故事例の目的としては、事故の再発防止・未然防止を目的として、現場で発生した事故、ヒヤリ・ハット等の情報を収集・活用し、対策を講じることができます。
ハインリッヒの法則では、1件の重大な事故・災害の背後には29の軽微な事故があり、その背景には「ヒヤリ」としたり「ハット」したりするような300の出来事が存在するといわれています。
大事故は、偶発的に起こるものではありません。日常の「ヒヤリとする体験」や「ハッとする出来事」は、いずれ大きな事故につながる前兆であることを理解し、このような体験や出来事があった場合はそのままにせず、何らかの対策を講じておく必要があります。
また、日頃からヒヤリ・ハット事例を記録し、事例を出し合い共有することもリスクマネジメントの観点からは大切なことです。
作業者が、現場の安全を確保するためには、どのような事故が発生しているかを知ることが大切で継続的に情報収集することが重要です。
事故の状況
当日の作業内容は,特高変電所 内のがいしの点検・清掃、および二次変電所のケーブル工事等であった
それでは、作業開始から事故発生までの経緯を次の通りに記載します。
(1) 作業準備として,作業責任者 (F)による 作 業 分 担 の 確 認 ( 下 請 詰 所 で C, D, E, F の 4名)
(2) 操作室で C,D,E,F,G,H6名によ る打合せ. この時は図面等を使用し,説明者は Fであった.
①作業内容:特高変電所内の が い し の 点 検・清掃
②作業範囲:遮断器から変圧器一次プッシ ングまでとする.
③作 業 予 定 時 間 : 9時 ~15時
④停電範囲:受電用断路器可動刃以降が全 停止
⑤安全対策:必要な箇 所に 接地をとる
⑥用具:はしご,脚 立, 接地器具
以上の事項を確認した
(3) H,G 2名による受電停止操作(操作 は手順書による.)
(4) 検電放電,短絡接地の順に行い,表 示を施すことを確認(変電所内で C, D,E,F, H,Gの 6名)し, 充電部分の確認を行っ た.
(5) 点検• 清掃の作業着手,各人の作業配 置 は 次 の 通 り
C: 2番線遮断器がいしの点検• 清掃
D: 1番線遮断器がいしの点検• 清掃
H : 断路器の下で立合い兼監視,作業着手の
E,F : 二 次 変 電 所 の ケ ー ブ ル 工 事 の 準 備
G : 高圧盤の点検準備
(6) 作業着手した後, 10分間程度経過し た時,立合者 (H) は二次変電所塗装工事打合 せのため特高変電所(作業現場)を離れた
(7)Cが遮断器のがいしを清掃 中,誤って2番線1次側断路器の充電部(白相)に接近し, 感電・アークにより火傷してしまった
事故の原因
事故は作業現場の立合い兼監視者が現場を離れた間に起きたこと,作業者は停電範囲が断路 器可動刃以降であり,断路器一次側までは充電 されていることを打合せで十分承知していたは ずであり作業経験年数も 15年であること等 を考えると,作業に熱中するあまりついうっか り重大事を忘れ,断路器充電部に誤って接近し たものと推定される
事故再発の防止対策
事故の再発防止対策として,次のようなことがあげられる,
(1) 受変電所の受電部のがいし等の点検・清掃の時は線路停止を行い,作業を実施することを原則とする.停電範囲を拡げ,活線近接作業は避けること.
(2) 作業者に対する安全指苓の強化 ~作業計画にそって作業をすることはもちろん のこと,停電の範囲については表示だけでな く,防護ネットまたはロープなどで囲い充電部分へ接近しないようにする.
(3) 立合者または監視者は,一連の作業が終了するまでは作業現場を離れはいこととす る.
保安規程に定める事項
電気事業法の規定に基づき,自家用電気工 作物設置者(以下,社長等という.)および従 業員は,通商産業局に届出た保安規程を邁守 する義務がある.
なお,保安規程には,次のような事項を定 めなければならないこととなっている.
・電気工作物の工事,維持または運用に関 する業務を管理する者の職務および組織に 関すること.
・電気工作物の工事,維持または運用に従 事する者に対する保安教育に関すること.
・電気工作物の工事,維持および運用に関 する保安のための巡視,点検および検査に 関すること.
・電気工作物の運転または操作に関すること.
・発電所の運転を相当期間にわたって停止する場合における保全の方法に関すること .
・災害その他非常の場合にとるべき措置に 関すること.
・電気工作物の工事,維持および運用に関 する保安についての記録に関すること.
・その他電気工作物の工事,維持および運 用に関する保安について必要な事項.
まとめ
作業者が現場で発生した事故情報、ヒヤリ・ハット情報を適切に収集し、組織的に事故防止のための対策を推進した場合、事故件数の減少や利用者からの信頼・評判の向上の効果が期待できます。
使用する設備・工具については、正しい使用方法と内在する危険性について理解させ、事故が起きないよう常に注意して使用するよう情報を共有しましょう。
働く人の安全を守るために有用な情報を掲載し、職場の安全活動を応援します。
働く人、家族、企業が元気になる現場を創りましょう。
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