事故事例の目的としては、事故の再発防止・未然防止を目的として、現場で発生した事故、ヒヤリ・ハット等の情報を収集・活用し、対策を講じることができます。
ハインリッヒの法則では、1件の重大な事故・災害の背後には29の軽微な事故があり、その背景には「ヒヤリ」としたり「ハット」したりするような300の出来事が存在するといわれています。
大事故は、偶発的に起こるものではありません。日常の「ヒヤリとする体験」や「ハッとする出来事」は、いずれ大きな事故につながる前兆であることを理解し、このような体験や出来事があった場合はそのままにせず、何らかの対策を講じておく必要があります。
また、日頃からヒヤリ・ハット事例を記録し、事例を出し合い共有することもリスクマネジメントの観点からは大切なことです。
作業者が、現場の安全を確保するためには、どのような事故が発生しているかを知ることが大切で継続的に情報収集することが重要です。
事故の状況
事故当日は,午前中から気温がどんどん上が り最高気温が更新されつつあった.
この需要家の保守の委託を受けている管理技 術者は,猛暑のため朝から臨時点検を行うために,受持ちの需要家を巡回していた.この需要 家においては,変圧器の油温が通常よりも高か った.
午前 1時,気温 38°C,キュービクル内温度 49°C,変圧器油温 71°C,負荷は定格の 1/2程度であった.
管理技術者は,変圧器の温度上昇を少しでも 抑えようと思い,工場から扇風機を持ってきて, PCT(取引用計器用変成器)の下に置き,変圧 器に送風し,数日間様子を見ることにした.
17時 31分,電力会社の方向地絡継電器 DGRが動作し,波及事故となった.
18時 40分,電力会社の係員が到着.当所 に事故点があることが判明した.
18時 50分,電力会社の気中区分開閉器 が開放され,波及事故は復旧した.
18時 56分,電力会社から管理技術者へ 事故の連絡がされた.
19時 40分,管理技術者が,現場に到着した. 調査の結果,引込用ケープルの端末が地絡して いることが判明した.夜間であり, 復旧資材の調達が難しいので,工事業者の手配をしただけで,復旧作業は翌日に持ち越すこと にした.
翌日, 8時から復旧作業に取りかかった.事 故点がケーブル端末であり,余長があったので, 損傷部を切詰めて改修した.
13時,改修作業が終了し,各部の点検,耐圧 試験,地絡継電器 (GR)試験を実施した.
14時,受電完了.自家用側が復旧した.
事故の原因
気温が上昇し,変圧器の湿度上昇を防ぐために,管理技術者が気をきかせて置いた扇風機が発火して,合成樹脂部分が下に落 ち,キュービクルの内部で余長として,まるめ てあ ったケーブルの被覆を損傷させたために発 生した.
事故再発の防止対策
キュービクル内の温度上昇を防ぐために換気扇を取付けた。
引込用ケーブルを, CVケープルから CVTケーブルに取替えることにした.
地絡保護装置付き気中区分開閉器を,引込柱上に取付けることにした.
管理技術者が臨時点検を行い,その際,気を きかせて設置した扇風機の温度上昇による絶縁 不良が原因で波及事故になったが,扇風機設置 に伴い,キュービクルの扉も施錠されていない 状態であった.場合によれば,公衆の感電事故も,発生する可能性を秘めていたわけである. そういう意味からも,問題のある行動であった わけである.
また,キュービクルは,炎天下の屋外に設置 されることがほとんどであるが(今回の扇風機 のような例は別としても),変圧器,コンデンサ 等,熱に弱い物を内部に持っている.可能なか ぎり,キュービクル内部の温度を 35°C以下にす るように努力したい.
まとめ
作業者が現場で発生した事故情報、ヒヤリ・ハット情報を適切に収集し、組織的に事故防止のための対策を推進した場合、事故件数の減少や利用者からの信頼・評判の向上の効果が期待できます。
使用する設備・工具については、正しい使用方法と内在する危険性について理解させ、事故が起きないよう常に注意して使用するよう情報を共有しましょう。
働く人の安全を守るために有用な情報を掲載し、職場の安全活動を応援します。
働く人、家族、企業が元気になる現場を創りましょう。
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