比較的危険度の高い電気工作物である「事業用電気工作物」のうち「電気事業用電気工作物」は,一般電気事業者,卸電気事業者及び特定電気事業者の電 気事業の用に供する電気工作物であり,需要家に質の良い安定した電気を継 続して供給する使命と,一般的に,その電気工作物の規模が大きく,かつ,山 間から市街地に至る広範囲に設置されるものであることから,保安上最大限 の配慮がされなければならない性格を有するもので,技術的能力を有する専 門家集団の管理が求められる電気工作物です.
電気工作物の管理
「事業用電気工作物」のうちのもう一方の「自家用電気工作物」 は,概念的にいうと工場や事業場などの規模が大きく,工事方法も複雑多岐な もので,設置された後も種々の変更,改造などが行われる機会の多い電気工作物です. これらの「自家用電気工作物」について「一般用電気工作物」と同様に,「電気供給者」に対し保安上必要な調査義務を課した場合, I電気供給者」は,定 期調査のほか電気工作物の変更,改造のつど,調査を行わなければならず,そ の調杏には,規模が大きいことから多大の労力と経費を要し,複雑多岐にわたることから高度の知識と技術を有する調査員も必要となり,さらに,企業秘密 の面から調在できないことも予想されます.
このための多大な労力と経費は電気料金の高騰を招き,公平の原則からも「電気供給者」に調査義務を課すことは問題があり,「自家用電気工作物」の保安責任は,その所有者または占有者が負うべきものと考えられるもので す.
自家用電気工作物の保安責任者
「自家用電気工作物」の中には,電力会社に電気の卸供給を行う卸供給事業者及び電力会社に 自家発余剰電力を供給する自家用発電所設置者の電 気工作物も含まれ,これらの電気工作物は「電気事業用電気工作物」に準じた 保安管理が求められるものです.
改正電気事業法においては,「事業用電気工作物」(「電気事業用電気工作物」 及び「自家用電気工作物」)の保安確保について自己責任原則に,より一層の重 点をおき ,その補完措置として国の直接監督する部分を残しています.
具体的には,「事業用電気工作物」の設置者(所有者又は占有者)に対し,保安上次のよ うな義務を課しています.
1 技術基準の維持義務
2 保安規程の作成,遵守義務
3 主任技術者の選任義務
4 工事計画の認可申請,届出の義務
5 事故 その他について の報告義務
電気工事業者及び電気工事従事者の義務
「事業用電気工作物」のうちの「自家用電気工作物」における「最大電力 500kW未満の需要設備」に関しては,電気工事士法において.その電 気工事の作業に従事する者の資格(第一種電気工事士,特種電気工事資格者及 び認定電気工事従事者)及び義務を定め,電気工事の欠陥による波及事故,感 電死傷事故及び禍電火災事故などの電気災害の防止を固り,電気工事業法に おいて,その電気工事に係わる電気工事業を営む者に対し,登録,届出又は通 知の義務を課すとともに,その業務の規制等を行うことによって質の良い電 気工事が請け負われ,実施されること図り ,電気用品取締法において,この「自 家用電気工作物」(「最大電力 500kW未満の需要設備」)を設置する者及び電 気工事の作業に従事する者(第一種電気工事士,特種電気工事資格者及び認定 電 気 工 事 従 事 者)に対し,表示 が 付 さ れ て い る 電 気 用 品 で な け れ ば 電 気 工 作 物 の設置又は変更の工事に使用してはならないとし,粗悪な電気用品による危 険及び障害の防止を図っています.
電気工事業法においても,電気工事業者に対し,表示の付されている電気用 品でなければ,これを電気工事に使用してはならないと規定しております.
なお,「最大電力 500kW末満の需要設備Jを除く「自家用電気工作物」(発 電所,変電所及び 500kW以上の需要設備等)に ついて は, 電気工事士法及び 電気工事業法の規制はありません.
したがって,資格のない者であっても,その電気工事の作業に従事すること ができ,登録,届出又は通知の手続きをしていない電気工事業者であっても, そ の 電 気 工 事 を 請 け 負 い , 施 工 す る こ と が で き ま す .
まとめ
一般的な「一般用電気工作物」を整理して判りやすくいう と,「電力会社」 から 10V又は 20Vの低圧(契約電力が 50kW未満の場合は, 60Vの高圧を含む)の電圧で受電し,受電した場所において,受電した電気を使用する ための電気工作物ということになります
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