現代社会はコンビュータによる管理及びコンビュータによる最適自動化等,電 子機器・装置の全盛時代である.そのコンビュータが機能を発揮するのは,質の 良い電気を安心して安全に使えることが前提になっている.もし,長時間停電し たら社会機能は損なわれ,生活できない状態に陥るといっても過言ではない.そ れゆえ,電気保安管理につい ての関心が高まり,電気設備の お医者さんとして, 重要性が認識されるようになってきた.
電気使用の安全対策 ・事故防止と電気設備の健康診断を適切に行うために,こ こで紹介する過去の事故・災害データを自分のこととして吟味し,保安管理業務 に生かしていただきたい.
事故及び災害の概要
自家用電気工作物の事故及び感電災害についての概要を次に示します。
〔1〕 自家用電気工作物の電気事故
原子力安全・保安院電力安全課で公表している自家用電気工作物設置者での電気事故件数は徐々に増えています。平成 16年度 から事故件数が低減したのは,主に電気火災と感電死傷の低減によるものである. 平成 16年 4月に電気関係報告規則の改訂により,電気火災は半焼以上,感電死傷 は入院以上となって統計上の件数が減少したと理解される.
平成 17年度を見ると,主要電気設備損壊が 108件(37.5%)で最も多 く,他社波及事故による事故が 94件(32.6%)と続き,感電死傷が 60件(20.8%)の順番となっている. 主要電気工作物の損壊は, 高圧ケーブル等を含んだ年代物の 古い機器と予想される.また,波及事故は,他の 自家用電気工作物設置者に大き な影響を及ぼしていることが理解できる.
(社)東京電気管理技術者協会扱い分の波及事故の部位(機器) ・原因別 にまとめたものを見ると事故原因で最も多いのは雷による絶縁破壊と自然劣化である. 電気工作物の崩壊が最も多いこ とを裏づけるデー タとなって いる.また, 波及事故の約 80%が受電用遮断器の電源側で起きている. 電源側機器及び線路に は注意が必要である.
波及事故原因を, 所轄保安監督部へ提出するときの分類に従 っ て 区 分 す る と、保守不完全と自然劣化による保守不全が,波及事故 の 40%を超えていることである.日頃の観察とトレンド管理及び設備診断の重要 性が認識さ れる.また,自然現象は圧倒的に雷による波及事故である .雷害防止 のためのア レスタ設置を進め ることが必要である.
〔2〕 感電災害事故の概要
自家用電気工作物にかかわる感電死傷事故の発生状況について、自家用電気工作物設置者における感電死傷事故の原因別の内訳を分析しました。調査期間は平成 3年〜平成 12年で,件数は累計であり、電気関係作業者であり ,被害者の過失によるものが 45%,作業方法の不良が 3% を占めている.電気関係者以外の場合で被害者の過失によるものが 59% と電気工作物の不良が 23%を占めている.
昭和 48年~平成 18年の労働災害による死亡者数の推移を示す. 全産 業における死亡者は当初 5269人であったものが関係者の努力によりほぼ年々減 少し平成 18年度は 1472人に減少している.
〔3〕 電圧と月別の感電災害発生状況
平成元年〜平成 17年の期間の高圧と低圧による死亡者数の推移について、平成 5年までは高圧によるものが 29人と 34人の間で,また低圧による ものが 10人と 21人の間と,高圧の場合が死亡者数が多いのに対し,平成 14年以 降は逆転して高圧の場合が 4〜10人に対し低圧の場合は 12人から 17人と多くな っている.これは高電圧に対する危険意識と保護具の使用の徹底等が要因であると推定される.
平成 17年度の月別感電死亡者数について,低圧の場合は 17件中 16件が 6月〜9月の 4カ月に集中している高温多湿の時期の薄着によ る作業等が主な要因と考えられる.一方,高圧の場合は低圧ほど極端に集中して いない
また,平成 17年度の感電死亡者 28人中低圧による死亡者が 61%を占め,高圧 によるものが 36%,また落雷によるもの 3 %となっている.
〔4〕 設備別感電死亡状況
送配電関係が24.9%を占め,他の設備におけるものに比べ,きわだって多い.また,電気使用場所の配線, 高圧開閉器,変圧器,コンデンサ等によるものは 26.8%であるが,これは 62.2% が電気取扱者の事故である.
〔5〕 感電災害の特異危険性
全産業の休業 4日以上の死 傷者のうちに占める感電災害による休業 4日以上の死傷者の比率は 0.09%であ るが,死亡者数だげについて見てみると,感電死亡者は全産業の死亡者のうち 1.7%を占めている.また,感電災害による休業 4日以上の死傷者数のうち,死亡者数が占める割合は 25.9%である.
ちなみに,全産業の休業 4日以上の死傷者数のうち,死亡者数が占める割合は1.3%である.このように感電災害は他の災害に比べ,非常に死亡率が高いとい える.
作業安全の基本
(1) ルールを守ることが基本です。労安法に定められている安全の手順を守り,作業を安全に遂行する.
(2) 心構えとして、作業前打合せ (TBM)で確認した手順を守り 作業を完全に遂行する.予定外の作業はしない.
(3) 呼称・復唱 を行います。ー動作ごとの呼称・復唱に より ,作業を的確に進行する.
(4) 救急体制を意識して、迅速・的確に応急処置を行う.
(5)服装については、作業に適した服装をする.
(6)作業前打合せ( TBM)を必ず行い、作業関係の他作業者の体調にも留意する.
(7) 区画の明確化を行い、安全を確保するため,作業区画と作業禁止区域の境界を明示する.
不完全な施設への対応
(1) 作業底の設置 の使用義務とします。高さ 2 m以上の箇所で作業を行うときは作業底を設ける.または安全帯により危険を防止する.
(2) 開口部等に囲い等の設置します。
(3)安全帯等使用の義務とします。
(4)安全帯を使用するときは、安全帯を安全に取り付ける設備を設ける.
(5) 悪天候時の作業禁止とします
(6)必要な照度の保持します。
(7) スレートなど屋根の危険防止処置
(8) 関係作業者以外の立入禁止
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